能登牛

左/佐々木料理長と能登牧場の平林さん
右/決まった時間に餌を与える
能登半島の先端近くの小高い山のてっぺん、日本海と富山湾に挟まれて風がぶつかりやすく、静かで自然豊かな能登牧場を訪ねました。比較的新しい牧場です。2014年に開場して約2年ごとに牛舎を増やしていき、今では4つの牛舎があります。ただ先日の地震により被害を受けているので、近いうちに立替を予定されている牛舎もあるそうです。
牛舎の前まで来てふと思ったのがとても静かなだということ。
まわりの自然の虫や鳥の鳴き声は豊かなのですが、牛の鳴き声が聞こえません。
牛舎の中に入るととてもおとなしい牛たちがまったりとのんびり過ごしていました。体はとても大きく、表面はつやつやとひかるピアノブラック。とても綺麗な毛並みをしていました。
「牛は毛皮を着ている動物なので、夏に弱くて寒さには強いのです。季節の変わり目には人と一緒で風邪をひいたりします。牛たちが一番快適に過ごせる気温は実は15〜16度くらい。その頃の牛たちは快適なのか、食べる量も増えます。」「性格は個々に違いますが、全体的には好奇心が強いけど少し臆病。大きな音はとても苦手としていますね。」とお話しいただいたのは能登牧場の平林さん。能登一のこだわり肥育農家さんです。
「牛たちが健康で快適に過ごすことにとにかく力をいれています。餌はもちろんのこと、とにかくこだわっているのが環境作りです。」様々な要因を加味して最適な環境作りに妥協を許しません。能登牧場の牛舎は背がとても高くて風が通りぬける近代的な作りをしています。牛舎内の匂いも全て風が吹き飛ばしてくれますので、実は牛舎の中はほとんど臭いがなく反対に外の方が臭いを感じるのです。
餌の内容も、また餌をあげるタイミングもこだわりがあります。毎餌後、かならず全ての牛の一頭一頭触りながら体調を確認しています。大きな音のする作業は午前中にまとめて、午後はなるべく音をたてないとか。また一頭あたりの面積も通常よりけっこう広くとっています。角切りの長さやタイミングは個々の性格に合わせてします。枠の中にはなるべく似た様な強さの牛を分けいれます。
その様な様々な工夫の中で育つ牛たちは、心なしかまったりとしていて静かで寝転がっているものが多く、そして不思議なことに本当に鳴き声が聞こえないのです。「鳴くっていうのは何かを求めているから。何かどこかに欲求不満があるのですよ。反対に鳴かないのは満足している状態なのです。牛のために考えられる事は全てやっていますよ」と朗らかに語られました。その熱意と丁寧な仕事だからこそ能登牧場の能登牛は、周りから絶賛を受けるような絶品の仕上がりになるのだと感じました。

左/背が高く風が通る抜ける作りの牛舎
右/ゆったりとくつろぐ能登牛たち

左/好奇心が高い能登牛にすり寄られる佐々木料理長
右/食後全ての牛を触って健康を随時チェックしていく

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